意思表示:絡み合う事例

ここでは、今までの私の解説には載っていない場合について述べています。

今回は2つの場合を取り上げます。

 

 

1.「取り消し後に現れた第三者との関係はどうなる?」

取り消し前に現れた善意の第三者との関係は、意思表示の取り消しを対抗することはできないと述べてきました。

では、取り消したあとはどうなるでしょうか?

 

この場合、表意者と第三者、どちらが先に対抗要件を備えるか、ということになります。

対抗要件とは、対外的に自分の権利を主張するために必要とされる要件を言います。

たとえば不動産の場合は、「登記」がこれにあたります。

 

2.「動機の錯誤」

動機の錯誤とは、意思と表示は一致するものの、その意思をつくる際の過程(動機)に勘違いがあるというものです。

具体例としては、偽物の絵画を本物と思って買う場合がこれにあたります。

この場合、絵画を買いたいという意思のもとに意思表示をしています。

しかし、買いたいと思ったのは、動機に偽物を本物と勘違いした欠陥があるからです。

 

このような動機の錯誤については、取引の安全という見地から、原則として無効主張を認めません

つまり偽物を買ってしまっても、どうにもならないというわけです。

 

しかし、売買契約の際にその動機が表示されて、相手方もそれを認識できるようになっていた場合は、無効を主張することができます

つまり、前の絵画の例の場合、買う前に相手に、

「これは誰々の絵ですよね?だから買います。」

と一言告げれば、無効を主張できるというわけです。

 

宅建の知識が実生活に役立つのは、こういうところにあったりするわけです。

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