前の章で、制限行為能力者制度について解説しました。
ここでは、取消や相手方の保護について説明していきます。
1.制限行為能力を理由とする取消しの効果
制限行為能力者が単独ではできない法律行為を行った場合、その行為を取り消すことができます。
取り消すと、その行為は、最初にさかのぼって、無効になります。
そして、この取消しは、取消前に現れた善意の第三者にも対抗できます。
2.相手方の保護
①制限行為能力者の詐術(21条)
制限行為能力者が、行為能力者であるかのように取引の相手方を信じさせるため、詐術を用いた場合、このような人を保護する必要はないので、その行為は取り消すことができません。
ここで詐術とは、制限行為能力者が、自分を行為能力者であると信じさせるために、自ら何らかの策を用いることをいいます。
たとえば、未成年者が携帯電話の契約などで、何も保護者に話していないのに、「保護者の同意を得ている」と言うことも詐術にあたります。
②催告権(20条)
取り消し得る行為がなされた場合、取消権を行使しない間は取引の相手方を不安定な立場に置くことになります。
そこで、相手方は、制限行為能力者側の人に対して、1ヶ月以上の期間内にその取り消すことができる行為を追認するか否かを確答すべきことを催告することができます。
ここで確答が得られれば問題ないのですが、確答が期間内に得られなかった場合、その催告を誰に対して行ったかで結果が変わってきます。
① | 未成年者、成年被後見人に対して催告 | 未成年者や成年被後見人は受領能力がないため、催告自体が意味のないものになる。 |
② | ①以外の単独では追認できない者に対して催告 |
この場合、期間内に確答がなければ、取り消したものとみなされる。 なお、単独では追認できない者とは、一般的に被保佐人や被補助人である。 |
③ | 単独で追認できる者に対して催告 |
期間内に確答がなければ、原則として追認したものとみなされる。 なお、単独で追認できる者とは、一般的に、各制限行為能力者の保護者や後に行為能力者となった本人である。 |
以上のような場合分けになります。
宅建のなかで制限行為能力者制度は非常に重要です。
紛らわしいところが多く、頭がごちゃごちゃしそうですが、まずは理解しましょう。