抵当権:法定地上権について

まず法定地上権とは何なのでしょうか。

例えば抵当権設定者が建物と土地の両方に抵当権を設定したとします。そして、その後債務者が債務の支払いができず、抵当目的物が競売されてしまったとしましょう。この場合、建物の所有者と土地の所有者が別々になってしまうことがあります。

上記のような場合のときに、建物存続のため地上権を設定したものとみなす権利のことを法定地上権といいます。

 

元来、土地と建物は日本では別個の不動産です。しかし、土地とその上の建物の所有者が同じである場合、土地利用権は存在しません。

よって、抵当権の実行により土地と建物が別々の人に帰属した場合に、建物の所有者は土地所有者から立ち退きを命じられると、それに従わなくてはならなくなってしまいます。

こんなことでは、土地と建物を所有する者が抵当権制度を利用できなくなってしまいますので、どうにか対策を練らなくてはなりません。

これが、法定地上権を認めている理由です。

 

そして、法定地上権が成立するためには4つの要件があります。

1.抵当権設定当時に土地の上に建物が存在すること

更地に抵当権が設定された場合、後日、その土地上に建物が建築されても、建物のために法定地上権は成立しません

ちなみに更地とは、建物がなく、すぐにでも建物の建築が可能である土地のことです。

また更地を目的としての法定地上権の成否は1番抵当権を基準とします。つまり最初に抵当権を設定した時を基準とすることですね。抵当権は、1つの不動産にいくつも設定することができます。

しかし、抵当権設定時に建物が存在していれば、後に滅失して再築した場合でも、法定地上権は成立しますが、その内容は原則として旧建物を基準とします。

まとめると、競売時に建物が存在しなければ法定地上権は成立しないということです

2.抵当権設定時に土地と建物の所有者が同じであること

もし抵当権設定時に土地と建物が別々の所有者に帰属するときは、あらかじめ土地上に存する建物のための土地利用権が設定されているので、法廷地上権は成立しません

これは、抵当権設定時に土地と建物の所有者が違ったが、後に同一の所有者に帰属するに至った場合も同じです。

しかし、抵当権設定時に土地と建物が同一所有者であっても、その後、第三者に譲渡された場合には、法定地上権は成立します。なぜなら、建物のための土地利用権は、抵当権設定に後れているので、抵当権の実行とともに消滅してしまうからです。

3.土地と建物の一方または両方に抵当権が設定されたこと

4.競売の結果、土地と建物がそれぞれ別の所有者になったこと

 

また、地代という項目も法定地上権に関係しています。

地代とは、土地利用者が土地所有者に渡す利用料のことです。

地代は当事者の協議があればそれによるのですが、協議が成立しない場合は、当事者の請求によって裁判所が決定します。

 

備考:宅建においてこの章は、重要度が高いです。

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