クーリング・オフ制度は最近よく耳にしますね。具体的にどういうものなのでしょうか?
1.規定の趣旨
宅地や建物の取引においては、過去に、買主が自由な意思表示をすることができないと思われる場所で、強制的に契約の申し込みをさせられるなど、強引なやり方で契約が締結されるケースがよく見受けられました。
このような場合、宅地や建物は高額商品なので、買主の損害は特に大きくなります。
そこで、消費者保護のために、クーリング・オフ制度を定め、一旦買受申し込みの意思表示をしたか、または売買契約を締結した後でも、一般購入者から、これを白紙に戻すことを認めたのです。
2.クーリング・オフの要件
①場所的要件
もし、一般購入者を不慣れな場所に連れて行き、そこで契約をさせるとなれば、一般購入者は冷静さを欠き、その場の雰囲気に負けて重要な意思決定を安易にしかねません。
そこで宅建業法は、一般購入者が、宅建業者の事務所等以外の場所において、「購入します」というように買受けの申し込みをしたり、売買契約を締結したりした場合には、クーリング・オフができるとしました。
それでは、クーリング・オフのできない事務所等とは、どのような施設でしょうか。
事務所 | 宅建業法でいう事務所とは、宅建業者の業務上の拠点をいう。 | |
取引主任者を設置すべき義務のある場所 | ① | 事務所以外の場所で、継続的に業務を行うことができる施設を有する者 |
② | 土地に定着する建物内に設けられた、一団の宅地・建物の分譲を行う際の案内所 | |
③ | 宅建業者が、他の宅建業者に対して、宅地・建物の売却について、代理または媒介の依頼をした場合にあっては、代理または媒介の依頼を受けたほかの宅建業者の、事務所または事務所以外の場所で、継続的に業務を行うことができる施設を有する者 | |
④ | 宅建業者が、一団の宅地・建物の分譲の、代理または媒介の依頼をし、かつ、依頼を受けた宅建業者が、その代理または媒介を、案内所を設置して行う場合にあっては、その案内所 | |
⑤ |
宅建業者が、宅地・建物の売買契約に関する説明をした後、当該宅地・建物に関し展示会その他これに類する催しを、土地に定着する建物内において実施する倍にあっては、これらの催しを実施する場所(宅建業者が他の宅建業者に対し、宅地・建物の売却について、代理または媒介の依頼をした場合にあっては、依頼を受けた他の宅建業者も含む |
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宅建業者の相手方が、その自宅または勤務する場所において宅地・建物の売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合に当たっては、その相手方の自宅、勤務場所 |
②時期的要件
いくら一般購入者保護の観点からクーリング・オフが認められているとはいっても、時期的な制限があります。
それは、買受の申し込みをした者または買主が、申し込みの撤回などを行うことができる旨およびその撤回の方法を、書面で告げられた日から起算して8日を経過するまでです。
③履行の要件
買受の意思が安定してなかったとはいえ、その後契約内容に従った履行がなされれば、契約を白紙に戻す必要性はもはやないといえます。
そこで、買受の申込者などが
a. 宅地・建物の引渡しを受け、かつ
b.代金全部を支払ったときは、クーリング・オフはできなくなってしまいます。
④クーリング・オフを行う方法
クーリング・オフは、書面でしなければなりません。
その理由は、撤回などの意思表示がなされたことを明確にすることによって、後日の紛争を回避することにあります。
クーリング・オフの効力は、書面を発した時に生じます(発信主義)。
一般購入者を保護する観点から、民法の原則である到達主義は採用していません。
これは、クーリング・オフの期間を目一杯利用させて、熟慮させることが狙いです。
⑤クーリング・オフの効果
効果としては、宅建業者は、速やかに、買受の申し込みまたは売買契約の締結に際して重量下、手付金その他の金銭を、返還しなければなりません。
また、撤回ないし解除に伴う損害賠償、または違約金の支払いは請求できません。
⑥特約の効力
クーリング・オフの各規定に反する特約で、申込者などに不利なものは無効になります。
備考:宅建において、クーリング・オフは重要です。実生活でも使えるものなので、ぜひしっかり学習しましょう。