8種類制限、最後は所有権留保の禁止の内容についてです。
まず、所有権留保とは、売買契約を締結しても、買主の代金不払いなどに備え、これを担保するため、目的物の所有権を売主が留保しておくことです。
1.規定の趣旨
所有権留保は、買主にとっては不利となります。
例えば、不動産の売買では、売主に登記名義があれば二重譲渡される危険が残ります。
また、売主が倒産した場合には、目的物は売主の財産として差し押さえられてしまう危険もあります。
そこで、宅建業法は、宅建業者が、宅地・建物を自ら売主となって一般購入者に販売する場合には、原則として所有権の留保を禁止して、一般購入者を保護しています。
2.制限の原則
①所有権留保の禁止
宅建業者は、自ら売主として宅地・建物の割賦販売を行った場合には、宅地・建物を買主に引き渡すまでに、登記その他引渡し以外売主の義務を履行しなければならないとして、原則として所有権の留保を禁止しています。
しかし、例外として、次の2つのいずれかに該当すれば所有権留保ができるとしました。
・引渡しまでに支払を受けた額が、代金額の30%以下であるとき
・買主が、宅地・建物の所有権登記をした後の(残)代金債務について、これを担保するための抵当権、不動産売買の先取特権の登記を申請したり、残代金を保証する保証人を立てたりする見込みもないとき
②その他の形態に関する制限
a. 譲渡担保の制限
譲渡担保とは、宅地・建物の所有権を一度は宅建業者から買主に移転するが、残代金の担保をするために、再度、その宅地・建物の所有権を売主が譲り受けるものです。
つまり、このような行為の制内容ということです。
宅建業者は、自ら売主として宅地・建物の割賦販売を行った場合には、当該宅地・建物を買主に引渡し、かつ、代金額の30%を超える額の金銭の支払を受けた後は、担保の目的で、再び当該宅地・建物を譲り受けてはいません。
所有権留保の禁止の脱法行為となるので、これを防止する趣旨です。
b. 提携ローン付売買の場合
まず、提携ローン付売買とは、買主が売買代金の支払のため、銀行から融資を受けローンを組むことがありますが、この場合に、売主である宅建業者が、買主の銀行への借金返還債務を保証する場合をいいます。
宅建業者は、自ら売主として宅地・建物の売買を行った場合には、代金の全部・または一部に充てるための買主の金銭の借り入れで、宅地・建物の引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して返還することを条件とするものにかかる債務を保証したときは、宅地・建物を買主に引き渡すまでに、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければなりません。
提携ローン付売買において、もし買主が銀行にローンを返済しないと、保証人である宅建業者は、代わりに返済しなければなりませんが、その返済した分を買主から取り立てることができます。
これを求償権といい、この求償権を担保する目的で、所有権の留保が利用されることがあるので、一定の制限を設けたものです。
備考:この章は宅建において、やや重要です。