宅建の中で、無権代理制度の内容は重要な地位を占めます。
まずは何を意味しているかという基本から理解していきましょう。
まず無権代理制度とは、代理人に代理権がなかった場合や代理権限を越えて代理行為を行った場合に、相手方を保護するために存在する制度です。
無権代理制度は、さらに表見代理と無権代理(狭義)に分かれます。
また相手方は、表見代理と無権代理(狭義)のどちらの保護を選んでもかまいません。
1.表見代理
表見代理には、3つの基本的な類型があります。
そして、表見代理とは、これらの類型に該当するような無権代理行為があった場合、善意無過失の相手方を保護するために、本人と善意無過失の相手方との間に契約を有効に成立させるものです。
また表見代理には、本人に何らかの帰責性があります。
しかし、その帰責性が本人に全く認められないとなると、話は別で、その無権代理行為は無効となります。
①代理権授与による表見代理
代理権授与による表見代理とは、本人が代理権を与えていないにもかかわらず、まるで与えたかのような表示をした場合になされる代理行為をいいます。
具体例は、本人が代理権を与えていないが、委任状だけを渡した場合に、その者が代理行為をしてしまうような場合といったものです。
②権限外の行為の表見代理
権限外の行為の表見代理とは、代理人に代理権はあるが、その代理権限を越えて代理行為をしてしまう場合をいいます。
具体例は、本人から本人所有の不動産について賃貸借契約を結ぶ代理権を与えられた者が、売買契約を結んでしまう場合です。
③代理権消滅後の表見代理
代理権消滅後の表見代理とは、以前あった代理権が消滅したにもかかわらず、代理行為をしてしまうものです。
また、①~③を複合した形というのも当然ありますが、そんなに難しくはありません。
要は単なる組み合わせにしか過ぎません。
2.無権代理
無権代理には、その相手方の態様によって3つの保護が存在します。
追認の催告権、取消権、無権代理人に対する責任追及権がそれです。
①本人の追認
(1)基本
本人は、無権代理行為がむしろ自分にとって利益があると思えば、これを有効であったものと認めることができます。
これを追認といいます。
なお、追認は、原則として、相手方に対する意思表示によって行います。
ですが、無権代理人に対して追認しても、相手方がその事実を知れば、相手方に対しても、追認の効果を主張できます。
追認があった場合は、無権代理行為は、行為のときにさかのぼって、有効になります。
もちろん追認を拒絶することもできます。
ちなみに、無効と取消しの章にも追認のことが出てきていましたので、それとの違いを少し述べておきます。
・取り消し得る行為の追認 → 一応有効な行為を確定的に有効にする。
・無権代理行為の追認 → 本人ついて無効な行為を有効にする。
このような違いがあります。
(2)応用
a.本人が無権代理人を相続した場合
無権代理人が死亡して、本人が無権代理人を相続した場合、本人は、追認拒絶をすることはできます。
しかし、その後、無権代理人としての責任を問われる可能性はあります。
b.無権代理人が本人を相続した場合
本人が志望して、無権代理人が相続した場合、無権代理人は、本人の地位を利用して追認を拒絶することはできません。
②追認の催告権
相手方は、善意、悪意を問わず、本人に対して、相当の期間を定めてその期間内に追認するかどうかを確答するべき旨を催告することができます。
もし、期間内に本人が確答しない場合、追認を拒絶したものとみなします。
③取消権
相手方は、善意のときには、無権代理人と結んだ契約を取り消すことができます。
ただし、この取消しは、本人が追認するまでの間にしなければなりません。
④無権代理人に対する責任追及権
相手方は、善意無過失のときには、無権代理人に対して責任を追及することができます。
その方法は、履行の請求か損害賠償請求のどちらかです。
ただし、無権代理人が制限行為能力者であるときは、責任を追求することはできません。
色々な言葉がでてきて難解な感じもしますが、それだけ重要ということです。
しっかり学習しましょう。