弁済(べんさい)とは、債務者が契約に従って、債務の内容を実現する行為をいいます。
弁済の内容などは、契約によって決まります。
1.弁済の内容
もっとも特定物(同一の物が世の中に存在しない物)に関しては、現状のまま引き渡せば事足ります。
例えば、中古車の売買契約で、契約時にブレーキの調子が良くなかった場合、売主は、ブレーキを修理せずにそのまま引き渡しても、弁済したことになります。
2.弁済の場所
弁済の場所は、通常、当事者の特約によって決まります。
特約がない場合、特定物の引渡しについては債権発生当時にその物が存在していた場所となります。
したがって、債権者は、契約のときにその物が存在していた場所まで取立てに行くことになります(取立債務)。
3.第三者による弁済
債務の弁済は、原則として、第三者が行うことができます。
第三者が行っても、債権者にとって不利益ではないからです。
しかし、債務の内容が債務者自身でなければ目的を実現することができないものである場合や、当事者が第三者による弁済に反対したときは、第三者は、弁済を行うことができません。
また、利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をなすことはできませんが、利害関係を有する第三者は、債務者の意思に反しても弁済をなすことができます。
ここで、利害関係を有する第三者とは、債務の弁済について法的な責任を持つ人のことをいいます。
4.弁済による代位
弁済が最終的な債務者でない者によって行われた場合に、その弁済をした者は、債務者に対して、弁済額の返還を請求する権利(求償権)を持ちます。
弁済による代位(だいい)とは、この求償権を確保するために、債権者が債務者に対して持っていた権利が、弁済をした第三者に移転する制度のことです。
※代物弁済(だいぶつべんさい)
代物弁済とは、本来の給付と異なる他の給付を現実にすることによって債権を消滅させる、債権者、債務者間の契約をいいます。
他の給付を現実にすることが必要であるので、代物弁済契約は、要物契約です。