これは借地権者の保護のためのものです。
借地権設定者が土地を第三者に譲渡した場合、民法によれば、原則として、借地権者は、その地上権または賃借権の登記を備えていなければ、これを第三者に対抗することはできませんし、この登記は貸借人や地上権者と地主の双方が共同でしなくてはなりません。
しかし、賃借権の場合、借地権設定者には登記に協力する義務はありません。
なおかつ、借地権設定者、つまり地主が登記に協力するという行為は、自分の土地の評価を下げることになるので、協力的な地主というのはほんの少ししか存在しません。
そこで、借地権には特別の対抗要件が認められているというわけです。
ちなみに、地上権の登記の場合には、地主に登記協力義務があります。
1.借地上の建物の登記
借地権者が、借地上に登記された建物を所有するときは、借地権を第三者に対抗することができます。
借地上の建物の登記は借地権者が単独でできるため、これにより、借地権者は、借地権について対抗要件を備えることが容易になります。
いくつか重要な判例がありますので挙げておきましょう。
~判例~
・土地賃借人は、自己と氏を同じくし、かつ、同居する長男名義で保存登記をした建物を借地上に所有していても、土地の新取得者に対し借地権を対抗できません。
・借地権者が借地上に自己名義の表示に関するつ登記のある建物を所有しているときは、その登記に対抗力を認めます。
2.掲示による対抗力の安全
借地上の登記した建物が滅失した場合、滅失の登記がなされるため、借地権の対抗力が失われてしまうのですが、これではあまりにも借地権者に酷となってしまいます。
そこで、借地権者が借地上に登記された建物を所有していたときは、それが滅失しても、
①建物を特定するために必要な書類
②滅失した日
③建物を再築する旨
これらを土地の見やすい場所に掲示するときは、なお借地権を第三者に対抗することができるとされています。
ただしこれはあくまで暫定的な措置であって、建物滅失の日から2年経過するまでに建物の再築、登記がなされなければ、対抗力を失うものとなっています。
※ちょっと余談+備考♪
・登記は、実際の状態と合致している必要があります。だから自ら実際の状態と合致しない登記をする者を法は救済しません。
・表示に関する登記は、本来、課税台帳の役割を持っているもので、建物を建てた場合には、この登記の申請が義務付けられています。
・一般に対抗力のある登記とは、表示に関する登記ではなく、所有権保存登記などの権利に関する登記をさします。
宅建の中で、結構登記の項目とは厄介なんですが、それだけ重要な地位を占めています。
上記の場合に限らず、宅建にはかなりの場合分けが生じてきますから、しっかり覚えていきましょうね。
この章の重要度は、宅建において高いです。