多数当事者の債権債務関係:連帯債務Ⅱ

宅建においての連帯債務の重要性は今まで述べてきたとおりです。

地道に理解していきましょう。

 

3.連帯債務者の1人について生じた事由の効力

①原則(相対効)

連帯債務において、各債務者が負う債務は、本来、それぞれ別個独立なものです。

これを相対効といいます。

例として押さえておきたいものは、債務の承認、債権譲渡の通知、時効の利益の放棄、無効または取消の原因などでしょう。

②例外(絶対効)

連帯債務は、当事者の契約などに基づき、複数の債務が束ねられている以上、場合によっては、連帯債務者の1人について生じた事由が、他も債務者に影響を与えることがあります。

これを、絶対効といいます。

絶対効が生じる事情としては、弁済ないしこれと同視すべき代物弁済や供託、相殺、更改、請求、混同、免除、時効があります。

次の事例をもとにそれぞれ解説します。

 

【事例】

『Aさん、Bさん、Cさんの3人は、それぞれお金を出し合って、Dさんから3,000万円の家屋を買うことにしました。そして、Aさん、Bさん、Cさんは、連帯債務を負うことにしました。なお、負担部分は、それぞれ1,000万円ずつとします。』

 

(1)弁済

連帯債務者の1人、例えば、AさんがDさんに3,000万円を支払うと、Bさん、Cさんの債務も消滅します。

(2)相殺

連帯債務者の1人、例えば、Aさんが、たまたまDさんに対して3,000万円を貸しており、この3,000万円と家屋の代金3,000万円を相殺したとします。

この場合、Bさん、Cさんの債務も消滅します。

(3)請求

Dさんが、連帯債務者の1人、例えば、Aさんに対して、「3,000万円を支払ってください。」と請求すれば、その効果は、BさんとCさんにも及びます。例えば、DさんがAさんに請求することで、Aさんに対する時効が中断されますが、時効中断の効果はBさんとCさんにも及びます

(4)混同

債権者Dさんは、連帯債務者の1人であるAさんの父であったが、死亡しました。

この場合、連帯債務者Aさんが、債権者Dさんを相続すると、混同により、Aさんの債務は、消滅します。

その結果、他の連帯債務者Bさん、Cさんも連帯債務全額を免れます

(5)他人の債権で相殺

連帯債務者Aさんは、Dさんに対して3,000万円を貸していました(3,000万円の債権が存在していることと同義です)。

このとき、BさんとCさんは、Aさんの負担部分の限度で、相殺することができます。

すなわち、Aさんの負担部分が1,000万円であることから、BさんとCさんは、Dさんから3,000万円請求されても、Aさんの負担部分である1,000万円については相殺できます。

その結果、Aさん、Bさん、Cさんは、2,000万円の連帯債務を負っていることになります。

(6)免除

債権者Dさんが、連帯債務者の1人、例えば、Aさんの債務の全額を免除しました。

このとき、BさんとCさんは、Aさんの負担部分についてのみ債務を免れます。

したがって、DさんがAさんの債務を免除することで、BさんとCさんは、Aさんの負担部分である1,000万円についてのみ債務を免れます。

その結果、BさんとCさんは、Dさんに対して2,000万円の連帯債務を負うことになります。

(7)時効の完成

連帯債務者の1人、例えばAさんのDさんに対する債務のみが時効により消滅したとします。

このとき、BさんとCさんは、Aさんの負担部分についてのみ債務を免れます。

すなわち、BさんとCさんは、Aさんの負担部分である1,000万円については債務を免れます。

その結果、BさんとCさんは、Dさんに対して、2,000万円の連帯債務を負うことになります。

 

4.連帯債務者間の内部関係

連帯債務者の1人が、債務を弁済し、その他自己の財産をもって共同の免責(とるべき責任を免除または軽減されること)を得たときは、他の債務者に対して、その各自の負担部分に応じた金額を求めることができます。

この権利を求償権といいます。

 

 

 

 

 

 

 

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